2001年、地元静岡で初めて個展をする際「何か静岡ゆかりのあるものを作品に取り入れたい」という思いから誕生したのが、橘をモチーフに楽園を描いた《香久(具)の国》のシリーズです。
まず静岡の特産物である蜜柑を思いつき、さらに蜜柑の原種である橘に着目しました。そして、橘の取材を重ねるうちに『古事記』に出会いました。『古事記』の中で橘は「時じくの香久の木の実」(「常世の国」(楽園)」に生えている不老不死の果物)として登場しています。作家はそのエピソードをもとに《香具(久)の国》という幻想的な世界を創り出したのです。
日輪、瑞雲、青雲波文、橘、常世の国に佇む女性というモチーフは、ここではより一層輝きを増し、作家の願うユートピアを巧みに表現しています。